今回は当院で治療を行った脱臼の症例についてご紹介します。

まず、脱臼とは関節を構成する骨同士の関節面が正しい 位置関係を失っている状態のことを言います。つまり関節が外れている状態です。

脱臼の中で一番多く遭遇するのは膝蓋骨の脱臼です。膝のお皿が左右にはずれてしまいます。重症度でグレードⅠ~Ⅳに分類されます。軽度では症状がないことも多いですが、重症度が進むにつれて歩行困難や関節痛が出てくることがあります。

軽度の場合は内科的な保存療法がおこなわれますが、重度の場合や痛みを伴う場合などに手術が行われることもあります。実際には動物の年齢と膝の重症度、痛みなどを総合的に判断して、内科的な保存療法か手術かを考えていきます。

次のレントゲンは左が正常で右が膝蓋骨内方脱臼をおこしています。赤丸を付けている部分の骨が膝のお皿の骨です。左側のレントゲンではしっかり大腿骨から離れていますが、右側のレントゲンでは内側にお皿が外れているため大腿骨と重なって見えます。

 

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 次のレントゲンは手術後のものです。引っ張っている内側の靭帯を緩めて、伸びてしまった外側の靭帯を縫いつめ、お皿の下の滑車の溝が浅かったので深くしました。それでもまだ内側に引っ張る力が強かったので脛骨粗面転移術(白いピンの部分の手術)を行い少しお皿の向きをかえました。

 

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次によく多く遭遇する脱臼は股関節の脱臼です。多くは交通事故などの大きな力が加わったことによりおきますが、股関節の形成不全などが原因でさほど大きくない力が加わっただけでも脱臼してしまうことがあります。股関節の脱臼の整復には麻酔をかけて骨盤と大腿骨を正常な位置にもどしてあげるだけで治るケースとすぐに再脱臼をおこして手術が必要なケースがあります。

次のレントゲンの仔は交通事故で股関節を脱臼してしまいました。

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全身麻酔を行い股関節の整復を行いました。整復後2週間ほど足を使わないように固定し無事治りました。

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今回のケースでは手術を行わずに整復ができましたが、当院でも整復後に関節が安定せず、再度脱臼をしてしまい手術を行うケースもあります。

 

次に紹介するのは、あまり多くはないですが肩関節の脱臼です。肩関節も大きな力が加わった際に脱臼することが多いです。

右前足、左前足どちらかが脱臼しています。どちらが脱臼しているかわかるでしょうか?

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レントゲンの方向を変えたものを見てみましょう!

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 右の肩関節の脱臼です。レントゲンは立体的な体を2次元で見るのでどうしても1方向からだと分かりづらくなることがありますので、通常多方向からのレントゲンの撮影になります。特に関節などの複雑な部位やお腹の中などいろいろな臓器が重なっているとなおさらです。

今回の肩関節の脱臼では筋肉の走行を変えることによって関節を安定化させる手術を行い約2週間足を固定しました。白く細長く映っているものは骨に打ち込んだ整形外科用のステンレスのピンです。

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 2方向から脱臼が整復されているのが確認できます。

今回のケースでは転院症例のため関節の脱臼から手術まで時間が長かったためにリハビリに時間がかかりました。

 

今回は異なる3か所の脱臼を紹介しましたが、他にも様々な部位で脱臼をおこします。足を痛がっていたり、動きたがらなかったりした場合は脱臼に限らず様々な病気の可能性がありますのでお気軽にご相談ください。